チャットファイト職人の朝は早い。
どうしてこんなに朝早く?
「昼間は学生やニートがはびこってますからね。レベルの高いチャットバトルが出来る時間帯は今しかないんですよ」
辛くはないんですか?
「そりゃ、最初は毎日やめたかったですよ(笑)だけど、今はもう習慣というか・・・体の一部のように感じていますね」
話しながらも、キーボードを休みなく叩く迫真な姿は鬼気迫る勢いだ。
なぜこの仕事を始めようと思ったんですか?
「言われてみると考えたこともなかったですね・・・、物心がついた時から周りにあったし、当たり前のように受け入れていました」
彼はそう言いながら、あるサイトを開く。寿司打だ。
なぜタイピング練習を?
「チャットファイトはスピードが大事ですからね。プレーにチャットが影響してしまっては、レポートの対象となってしまいます」
チャットファイトを極めた彼が未だに学び続けている現実に我々は衝撃を受けた。
そこで淡々とゲームを進めている彼の表情が険しくなった。場に緊張が走る。
どうかしたのですか?
「煽られたのですよ。どちらが上か分からせてあげるのも、私達の仕事です」
彼はおもむろに画面を閉じ、あるサイトを開いた。OPGGだ。
「相手のランクと勝率を調べます。仮に自分より低かったらその数字をつぶやくだけでいいんですから」
無駄のない動きに我々は感嘆せざる負えなかった。しかし、彼の表情は曇ったままだ。
なにかよくないことが?
「相手のランクと勝率が自分より高かったのですよ。この場合、全体チャットで煽られたことを呟きます。
場の空気を味方につけたほうが勝ちですから」
彼は妥協を許さない。しかし、未だに彼の旗色は悪いようだ。
このようなこともあるのですか?
「負けることはもちろんあります。しかし、敗因を分析することで次に繋がります。今回は相手がプリメイドだったのでしょう」
彼は全てのサモナーをミュートしながら降参を連打する。常に前向きな彼の姿は職人そのものだ。
時刻は午後9時を回った。仕事を一段落終えたのか、彼はゲーム画面を閉じた。
その後、画面を見つめること数十分、何かを探しているようだ。
「2chのLOLスレをチェックしています。僕が晒されていないか確認するためです。」
彼は公式からBANを受けた上位5%以上のチャットファイター。有名になると批判がつきまとうものだ。
彼は再びゲームを開き、何かをしゃべり始めた。どうやら友人とスカイプをしているようだ。
一日取材をしてきて、初めて彼は頬を緩めた。
「この瞬間だけ仕事を忘れることができるんです。この仕事はかなり精神にキますからね。」
その笑顔はチャットファイトをしていた彼とは別人のようだ。
スカイプでのケンカはしないのですか。
「するはずないじゃないですか、だって怖いですよ、怒鳴られたら」
この二面性が人を惹きつけて病まない理由だろう。そして、ゲームを続けているうちに、午前2時を回ってしまった。
「明日も早いので、この辺で終わらないとダメですね」
この仕事が精神的にも負担を強いられるということで、体調管理も万全だ。我々も彼には見習わないとならない。
最後に、あなたにとってこの仕事とはなんですか。
「使命かな・・・いや、飾りすぎましたね。自分自身の証明です。そう、誰でもない、「自分」の」
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